
足場の会社が「プラットフォーマー」ってどういうこと?建設業界ってこれからどうなるの?
建設現場の「足場」で有名なタカミヤ。しかし今、同社は足場レンタル会社から、建設業界全体の課題を解決する「プラットフォーム企業」へと、大きな変革を遂げようとしています。
この記事では、そんな変革の真っ只中にいる株式会社タカミヤのビジネスモデルや業績を、IR資料などの公式情報に基づいて分かりやすく分析していきます。
この記事を読めば、同社の現状と未来の可能性がきっと見えてくるはず。一緒にタカミヤの「今」と「これから」を考えてみましょう!
企業概要とビジネスモデル
基本情報
銘柄名 | 株式会社タカミヤ |
証券コード | 2445 |
業種 | サービス業 |
上場市場 | 東証プライム |
ビジネスモデル・収益構造
主な事業内容
タカミヤグループは、主に以下の4つのセグメントで事業を展開しています。
- プラットフォーム事業: 顧客が保有する仮設機材の管理を請け負う「OPE-MANE」や、BIM/CIM(3Dモデル)を活用した設計支援など、建設現場の生産性向上に貢献するソリューションを提供。
- レンタル事業: 次世代足場「Iq System」をはじめとする、安全で高品質な仮設機材のレンタル。
- 販売事業: 自社で開発・製造した仮設機材や、環境関連製品、構造材などの販売。
- 海外事業: 韓国、ベトナム、フィリピンを拠点に、仮設機材の製造・販売・レンタルを展開。
ビジネスモデル:高性能な製品(Iq System)と革新的サービス(OPE-MANE)の両輪
同社は、従来の「仮設機材をレンタル・販売する」というフロー型のビジネスモデルから、建設業界の課題を解決するプラットフォームを提供し、継続的な収益を得るストック型のビジネスモデルへの転換を進めています。
具体的には、①高性能な自社製品(Iq System)と②革新的な管理サービス(OPE-MANE)の2つによるストックビジネス化を進めています。
【深掘り解説①】次世代足場「Iq System」とは?
「Iq System」は、安全性と作業効率を劇的に向上させる次世代の足場システムです。
最大の特徴は、常に手すりのある安全な環境で作業できる「手すり先行工法」の採用や、部材の抜け止め機能により、現場の墜落・転落リスクを大幅に低減している点です。
部材は軽量かつ点数も少なく、ハンマー1本でスピーディーに施工できるため、作業時間を短縮。保管や輸送の効率も大きく向上させます。
このように「Iq System」は、建設業界が抱える「安全性向上」と「人手不足(生産性向上)」という2大課題を同時に解決するソリューションです。
【深掘り解説②】資産管理プラットフォーム「OPE-MANE」とは?
そして、この高性能な「Iq System」を顧客が最大限に活用するために用意されたのが、資産管理プラットフォーム「OPE-MANE(オペマネ)」です。
OPE-MANEは、顧客(足場施工会社など)が購入した「Iq System」を、タカミヤが自社の機材センターで預かり、保管・整備・入出庫管理までを一貫して代行するサービスです。
顧客はWeb上の専用システムから、いつでも自社が預けている機材の在庫状況や稼働状況をリアルタイムで確認できます。タカミヤの全国の拠点が、あたかも顧客の「自社機材センター」のように機能するイメージです。
これにより、自社で広大な機材センターを持つ必要がなくなり、土地代や管理スタッフの人件費といった固定費を大幅に削減や手間のかかる機材のメンテナンスや管理業務から解放されるため、施工業務に集中できます。
ほかにも、自社の拠点がないエリアでも、近くのタカミヤの機材センターから機材を出庫して、全国で工事を受注することが可能になります。
企業のビジネスに関するトレンド
タカミヤは、中期経営計画にて「プラットフォーム事業の拡大」を最重要課題として掲げています。
建設業界では、「2024年問題」に端を発する労働時間規制や、深刻な人手不足、作業者の高齢化といった課題が山積しています。
このような状況を背景に、「省人化」「生産性向上」「安全性向上」に貢献するソリューションを提供することで、成長を目指しています。
具体的には、
- 「OPE-MANE」の利用企業を増やし、ストック収益を積み上げる。
- BIM/CIMや作図ツール「Rabot」などのDXサービスを拡充し、設計段階からの効率化を支援する。
- 足場運搬ロボットの開発など、現場作業を直接的に省力化する技術にも投資する。
このように、建設業界の構造的な課題をビジネスチャンスと捉え、ハード(機材)とソフト(サービス)を融合させたプラットフォーム戦略で、持続的な成長を実現しようとしています。

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業績と株価の分析
業績推移と今後
過去5年実績と会社予想
決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 当期純利益(百万円) | EPS(円) |
---|---|---|---|---|
2021年3月期 | 38,812 | 1,586 | 857 | 18.4 |
2022年3月期 | 39,800 | 1,682 | 965 | 20.7 |
2023年3月期 | 41,894 | 2,253 | 1,460 | 31.4 |
2024年3月期 | 44,127 | 3,404 | 1,887 | 40.5 |
2025年3月期 | 43,827 | 2,061 | 1,230 | 26.7 |
2026年3月期(予想) | 49,400 | 2,300 | 1,000 | 21.9 |
過去5年の成長率 | 4.9% | 7.7% | 3.1% | 3.5% |
2024年をピークに下げています。販売事業からプラットフォーム事業への注力により減収増益となればまだよいのですが、それも叶わず。
直近決算のポイント(2026年3月期 第1四半期)
2025年8月6日に発表された直近の決算は、売上高は99億4百万円(前年同期比1.6%増)と増収を確保した一方、営業利益は2億4百万円(同22.2%減)となりました。この減益は、主に2つの要因があります。
〇海外事業の不振(営業利益 -0.8億円)
最大の減益要因は、韓国経済の停滞を受けた海外事業の落ち込みです。これが利益を大きく押し下げました。
〇戦略的な先行投資の増加(営業利益 -0.9億円)
もう一つの大きな要因が、将来の成長に向けた先行投資です。プラットフォーム事業を拡大するためのDX人材の採用や、OPE-MANEシステムの機能拡充、ロボットなどの研究開発に積極的に費用を投下した結果、販管費が増加しました。
減益という結果ではありますが、最も重要なプラットフォーム事業は、売上高が14億56百万円(同50.8%増)、営業利益が2億76百万円(同150.9%増)と、会社計画を上回る大幅な増収増益を達成しました。事業モデルの転換が順調に進んでいることを強く印象付けています。
PER推移と今後
PERの推移
タカミヤのPERは平均14倍くらい。10倍~19倍くらいのレンジ。
2025年8月15日現在だと15.7倍なので、平均よりちょっと高いくらい。
業界平均との比較
プライム市場のサービス業の平均PERは29倍くらい。19倍~48倍くらいのレンジ。
関連が深い建設業の平均PERは12倍くらいで、9倍~15倍のレンジ。
関係する業種のPERから見れば、だいたい適正くらいの水準でしょうか。
今後のPER水準の予想
プラットフォーム事業の収益構成比が高まり、「建設DX」関連銘柄としての認知が広がれば、市場からの成長期待が高まり、PERは上昇する可能性があります。
建設業界の構造的な課題解決に貢献するビジネスモデルは、社会的な意義も大きく、投資家の関心を集めやすいテーマと言えるでしょう。
一方で、先行投資が続く間は利益の伸びが抑制されるため、PERが急上昇するには少し時間が必要かもしれません。
「株価=EPS×PER」から見る株価増減と今後の注目ポイント
株価(円) | 株価増減率 | EPS(円) | EPS増減率 | PER | PER増減率 | |
---|---|---|---|---|---|---|
2021.8.20 | 450 | - | 21.5 | - | 21.0 | - |
2025.8.18 | 346 | -23.1% | 21.9 | 1.8% | 15.8 | -24.4% |
これまでの株価の増減(2021年⇒2025年)
- EPSは+1.8%
- PERは△24.4%
- 株価は△23.1%
PERが原因で下げています。期待値が低くなっている。
経営指標を見れば、ピークをすぎて減収減益と見えるので、期待値が低くなるのは自然な反応。
ただし、「構造転換をしている+海外事業の不振という一時的な要因によるもの」と考えれば、これから増収増益に向かうのでは?と考えます。
今後の注目ポイント
タカミヤへの投資ストーリーを考えるとき、私が注目する指標は明確です。
-
最重要KPI: OPE-MANEのアカウント数・契約高の推移
これが力強く伸びている限り、投資ストーリーは崩れないと考えます。四半期ごとの伸び率が加速すれば、タカミヤの構造改革が大成功。
-
収益性KPI: プラットフォーム事業の営業利益率
先行投資を吸収して、利益率が改善傾向にあるかを確認します。
-
リスク管理KPI: 海外事業の減益
政治などで左右される海外事業は、減益幅が縮小傾向となるかどうか。今期だけだといいのですが、コントロールの範囲外にあること。海外でもプラットフォーム事業への転換が図られればいいですね。

当ブログに掲載している内容は、筆者の個人的な見解や経験に基づくものです。投資に関する最終的なご判断は、ご自身で十分にご検討のうえ、自己責任で行ってください。当ブログの内容によって生じた損失等については、一切の責任を負いかねますのでご了承ください。



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