業種別PERで「いまの位置」を見る【2025年8月更新】

個別銘柄が割高なのか割安なのか、いまいち分からん…

そんな時は業種別のPERが参考になります!

PERは個別銘柄の体温計。いまの株価が利益に対して高いか安いかを手早く測れる指標のひとつです。ただし“平熱”は業種ごとに違います。

そこでこの記事では、日本証券取引所が公表しているデータを用いて業種別のPERを紹介し、個別銘柄の分析に役立つ「業種の平熱」というものさしを用意します。

個別銘柄のPERだけで判断せず、同業種の水準と並べて“いまどの位置か”を確認するための参考情報として、自分のためにまとめます。

そもそも【PER】って何だっけ?ざっくり解説!

PER(株価収益率)は、株価が「1株利益(EPS)」の何倍かを表す倍率です。

計算式:PER=株価÷1株あたり純利益

PERが具体的に何を示しているかについては、ざっくり次のとおり。

  1. 今の利益水準が続いた場合、何年で投資額を回収できるか
  2. 投資家からの期待
  3. 市場の雰囲気(センチメント)

詳しくはこちらの記事で解説!

数字が低ければ割安に、数字が高ければ割高に見えやすいのが基本ですが、絶対値だけでの判断は禁物。

設備投資が重い業種、景気に大きく振れる業種、安定収益のディフェンシブ業種では「平熱」が違います。だからこそ、銘柄単体のPERを見るときには、業種別のPERも確認するのが王道です

過去のデータから見る【業種別のPER】

使うデータは、日本取引所(JPX)が公表している業種別PER

規模別・業種別PER・PBR | 日本取引所グループ

毎月の業種別集計をもとに「いまの業種の平熱」とのズレを見ます。

最新の数値を見るだけでなく、過去データも見ながら「今は過去の水準に比べて高いのか、低いのか」も見ておくと、景気や金利の局面の影響を折り込んだ判断がしやすくなります。


ここからは過去10年分のデータを使って、業種別のPERを解説します。

プライム市場 業種別PER
業種

PER

(2025.7)

平均値

標準偏差

σ

平均値

平均値

水産・農林業 9.8 15.2 3.6 11.5 18.8
鉱業 6.1 30.1 32.8 -2.7 62.8
建設業 13.3 12.4 2.7 9.6 15.1
食料品 24.7 21.8 3.0 18.9 24.8
繊維製品 18.8 25.7 11.7 14.0 37.3
パルプ・紙 15.8 24.6 25.4 -0.7 50.0
化学 17.4 20.2 4.2 16.0 24.4
医薬品 23.9 29.5 4.0 25.5 33.6
石油・石炭製品 11.1 8.2 4.2 4.0 12.3
ゴム製品 13.2 19.2 23.0 -3.8 42.2
ガラス・土石製品 32.5 18.6 5.6 13.0 24.3
鉄鋼 9.5 11.1 6.3 4.8 17.5
非鉄金属 17.0 17.3 10.3 7.0 27.5
金属製品 15.5 19.1 4.4 14.7 23.5
機械 20.4 20.6 5.6 15.0 26.2
電気機器 23.5 24.3 5.4 19.0 29.7
輸送用機器 11.5 13.8 4.5 9.3 18.3
精密機器 25.4 30.8 11.0 19.8 41.8
その他製品 31.5 24.9 6.0 19.0 30.9
電気・ガス業 6.4 13.7 8.5 5.2 22.3
陸運業 11.9 23.5 20.2 3.3 43.8
海運業 4.6 7.7 4.9 2.9 12.6
空運業 10.3 13.5 5.6 7.9 19.0
倉庫・運輸関連業 16.0 16.3 5.8 10.4 22.1
情報・通信業 20.5 20.8 7.9 12.8 28.7
卸売業 11.8 13.2 5.8 7.5 19.0
小売業 28.9 30.0 7.7 22.3 37.8
銀行業 13.2 10.7 2.1 8.6 12.7
証券、商品先物取引業 10.9 17.3 16.0 1.3 33.3
保険業 10.3 13.9 4.6 9.3 18.5
その他金融業 12.2 12.5 2.4 10.1 14.9
不動産業 13.2 16.3 3.8 12.5 20.1
サービス業 29.5 34.0 14.2 19.8 48.2

【表の見方・注意点】

・日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR 」の「加重_PER(倍)」について、2015年1月分以降のデータを用いて計算。

・2022年3月分までは市場一部、2022年4月以降はプライム市場区分で計算。

・平均値-σがマイナスになることがありますが、これは平均値からの対称なばらつき目安として計算したためであり、元データにマイナス値はありません。

こんな数字だらけの表を見せられても分からんがな!何を見たらええんや?

業種別PER表の使い方を解説!

たしかに、数値がたくさん書かれている表だけ見ても、どうみたら良いか分かりにくいですよね。

ここでは業種別PERの表で、どのように使えるか解説します。

用語の解説

表の中で使っている用語を解説します。

  1. 平均値:過去データの単純平均
  2. 標準偏差(σ):平均値からどれだけばらつきがあるか
  3. 平均値-σ:平均値からやや下のレンジ
  4. 平均値+σ:平均値からやや上のレンジ

ざっくりイメージするなら「平均-σから平均+σの間に、大体7割くらい収まる」感じですね。

例えば、情報・通信業だと

業種

PER

(2025.7)

平均値

標準偏差

σ

平均値

平均値

情報・通信業 20.5 20.8 7.9 12.8 28.7
  1. 平均値:20.8倍
  2. 標準偏差(σ):平均値から±7.9ばらつく
  3. 平均値-σ:12.8倍まではよくあること
  4. 平均値+σ:28.7倍まではよくあること

これをまとめると「情報・通信業のPERは、大体12.8倍~28.7倍の範囲に収まっている」ことが分かります。

業種別PER・個別銘柄PERを比較

具体的な例で解説します。

情報・通信業に分類されているランドコンピュータのPERは11.2倍(2025年7月30日時点)。

これは、情報・通信業のよくあるPERの範囲の下限12.8倍よりも下回っています。「割安株を見つけたかも!」というキッカケになるかも。

ここから、

「割安な原因はなんだろう?」

「これから割安が解消される(=PERが上昇して株価も上がる)材料があるかな?」

といった、個別銘柄の分析につなげることができます。

まとめ:業種の体温計を、個別の判断に

PERは、個別銘柄の体温計として便利ですが“平熱”は業種で違います。

JPXの業種別PERを使って「業種の平熱」を先に決め、個別のPERをその上に重ねるだけで、割安・割高の見え方はグッとクリアに。

毎月の確認ルーティンにして、“ものさし”で判断する癖を作りましょう。

体温計と平熱、これさえあれば慌てんで済むわ。来月もサクッと点検や!

おすすめの記事